2025.12.19
整備・修理
アルファロメオスパイダー 幌開閉不良・パワーウィンドウエラー・ドアロック不良修理

岐阜県の方
アルファロメオスパイダー 幌開閉不良・パワーウィンドウエラー・ドアロック不良修理(2025年11月)
ご用命内容/入庫時の症状
アルファロメオスパイダーが、以下の不具合のご相談にて修理入庫となりました。
- 幌(ソフトトップ)の開閉ができない
- パワーウィンドウ作動時にエラーメッセージが表示される

- 運転席ドアロックが解除できない
入庫後は、まずテスターによる故障コードのチェックを行い、その後、実際の症状をひとつずつ再現しながら点検を進めていきました。

専用テスターを車両に接続し、各ECUのフォルトメモリを確認します。
パワーウィンドウ関連の症状確認
左右のパワーウィンドウはスイッチ操作で一応は上下動しますが、以下のように「正常」とは言えない状態でした。
- ドアを開け閉めしても、ガラスが自動で少し下がる/上がる動きをしない
- オート機能を使っても、途中で止まったり、狙った位置で止まらない
- メーターパネルにパワーウィンドウ関連のエラーメッセージが表示される
この車種では、ドアを開閉した際にウィンドウガラスが少しだけ自動で上下することで、
- 幌との干渉防止
- ウェザーストリップの密閉性向上
などを行っています。ここが正しく動かないと、幌開閉にも影響が出るため、原因を慎重に追っていきます。
パワーウィンドウ不良の原因と修理内容
ドア内張りを取り外し、配線・スイッチ・コントロールユニットの各部を点検しました。
- 配線:断線や接触不良はなし
- スイッチ:機械的な異常や明らかな接点不良はなし
- ドア内部コントロールユニット:内部不良と思われる動作不良を確認
左右ともドア内部に装着されているドアコントロールユニットに不具合があり、
- ウィンドウ位置の学習が保持できない
- ドア開閉時の自動上下制御が正しく行えない
といった症状を引き起こしていました。
実施した作業
- 左右ドアコントロールユニット新品交換


- テスターを使用したウィンドウポジションの初期化・学習作業
- ドア開閉に合わせた自動ドロップ/自動アップ機能の動作確認
作業結果
- 左右パワーウィンドウはオート機能含めてスムーズに作動
- ドアの開閉に連動した自動上下も正常に復帰
- メーターパネル上のパワーウィンドウエラーメッセージも消去され、再発なし
運転席ドアロック不良の症状と原因
運転席ドアロックについては、ロック操作のたびに「チャタリング」と呼ばれる細かい振動音が発生していました。
- キーレスでロック/アンロックを行うと、カチャカチャと異音がする
- ロックが一度で決まらず、何度か作動を繰り返すことがある
- 場合によってはロック解除ができないこともある
ドア内側からロック機構を確認したところ、
- 内部モーターおよびリンク部に経年劣化が見られる
といった状態でした。
実施した作業
- 運転席ドアロック本体の交換

- ロッド長さ・リンク部の作動確認・微調整
- キーレス・室内スイッチそれぞれでロック/アンロック動作の確認
作業結果
- ロック/アンロックともに一回の操作で確実に作動
- チャタリング音は発生せず、作動音も正常レベル
- 実走行時のドアロック状態も問題なし
幌(ソフトトップ)開閉不良の詳細診断
続いて、メインのご用命である幌開閉不良について診断を行いました。
幌の開閉システムは、
- トランクロックの開閉状態信号
- 幌ロック位置スイッチ
- ソフトトップフラップのロックセンサー
- 油圧(または電動)ポンプとアクチュエーター
- 車両側コントロールユニット
など、複数の条件が揃って初めて作動します。そのため、どこかひとつでも条件が満たせていないと、幌が動かない・途中で止まるといった症状が出ます。
1. トランクロック閉信号不良
まず、幌開閉に必須となるトランクの「閉」信号を点検しました。
- テスター上でトランクステータスを確認 → 常に「OPEN」状態のまま
- 実際にはトランクはきちんと閉まっているが、ECU側が「閉」を認識していない
この状態では、車両側が「トランクが開いている」と判断しているため、安全のため幌制御がロックされてしまいます。
実施した作業
- トランクロックアッセンブリーを取り外し、作動点検
- 内部マイクロスイッチ部の不良を確認
- トランクロック本体を新品に交換

交換後、テスター上でトランクステータスが「CLOSE」に切り替わることを確認し、幌制御ユニットが開閉動作を開始できるようになりました。
2. ソフトトップフラップロックの作動不良
幌開閉時には、ボディ後方のソフトトップフラップ(幌収納部のカバー)が連動して開閉します。
今回の車両では、
- フラップロックが正しい位置でロックされず、センサーが「ロック完了」と認識できない
- その結果、幌動作が途中でストップしてしまう
という症状が見られました。
実施した作業
- フラップロック機構の分解・清掃
- ロックストライカー位置の調整
- ロックが確実にかかる位置へ微調整

調整後は、フラップロックが安定して作動し、幌制御ユニット側でもロック完了信号が正しく認識されるようになりました。
3. ソフトトップフラップダンパーの劣化
ソフトトップフラップの起き上がりが悪く、途中で止まったり、手で持ち上げないとスムーズに動かない状態でした。
原因は、左右に装着されているガスダンパーの劣化によるものです。
実施した作業
- 左右ソフトトップフラップ用ダンパーを新品に交換

- 幌開閉動作と連動させたときのスムーズさを確認
交換後は、フラップの動きが軽くなり、幌開閉時の挙動も安定しました。
4. バッテリ状態と幌ポンプの負荷
幌の開閉動作は、非常に大きな電流を必要とするシステムです。
今回の車両では、
- アイドリング電圧・負荷電圧ともに低め
- クランキング性能もやや弱い
といった状態で、幌作動時の電圧降下も大きく、ポンプの動きに影響が出ていました。
実施した作業
- バッテリテストを実施し、容量低下・内部抵抗増大を確認
- バッテリを新品に交換

- 交換後に再度幌開閉テストを実施
バッテリ交換後は、幌作動中の電圧も安定し、ポンプの動きも改善しました。

修理後の状態と残存している経年劣化
今回の一連の修理により、
- パワーウィンドウ:左右ドアコントロールユニット交換と学習にて正常作動
- 運転席ドアロック:ロック本体交換にてチャタリング解消、ロック/アンロックともに良好
- 幌開閉:トランクロック交換・フラップロック位置調整・フラップダンパー交換・バッテリ交換により開閉動作は一通り可能に
- メーターパネル上のエラーメッセージ表示も解消
といったところまで改善しています。
一方で、長年使用されてきたことによる経年劣化として、
- ソフトトップ用ポンプの出力がやや弱い
- ソフトトップフラップ用シリンダーの力も新車時と比べると不足気味
といった「部品としての疲れ」は残っています。
そのため、現状では、
- 幌開閉時に、人の手で少しフラップや幌本体を補助してあげるとスムーズ
- 補助を行えば、幌の開閉動作は最後まで完了可能
というレベルに仕上げています。





まとめ/今後のメンテナンスポイント
電動ソフトトップ車は、
- ドアコントロールユニットや各種ロックスイッチ
- トランクロックやフラップロックなどの機械式ロック機構
- ポンプ・シリンダー・ダンパー類といった駆動系部品
- それらを支える電源(バッテリ・充電系)
などが複雑に絡み合いながら作動しているため、ひとつ不具合が出ると、今回のアルファロメオスパイダーのように、
- 幌が動かない
- パワーウィンドウのエラーが出る
- ドアロックの作動がおかしい
といった複数の症状が同時に現れることも珍しくありません。
今回の修理では、
- 電気的な制御(コントロールユニット・信号系)
- 機械的なロック機構・ダンパー類
- 電源系(バッテリ)
それぞれを切り分けて整えていくことで、オーナーさまに安心してお乗りいただける状態まで仕上げることができました。
今後も、幌やドア周りで気になる症状が出始めた際には、早めの点検・ご相談をおすすめいたします。
MOTORIZEサービス部