2025.12.03
整備・修理
BMW X6 トランスファーオイル・フロント/リヤデフオイル交換

岐阜県の方
今回は、BMW X6 のお客様より
「加速時にクラッチが滑るような振動、ジャダーのような症状が出る」とのご相談をいただき、
トランスファーオイルおよびフロント/リヤデファレンシャルオイルの交換作業を実施しました。
走行距離や使用環境から見ても、駆動系オイルの経年劣化が進んでいる可能性が高い状況でしたのではと考え、症状改善と今後のトラブル予防の両面から、関連するオイルを一式交換する方針としました。
ご入庫時の症状・ご相談内容
- 加速していく際に、クラッチが滑っているような細かい振動が出る
- 低速〜中速域でアクセルを一定量踏み込んだときに、ジャダーのような違和感を感じる
- メーター内の警告灯点灯などは無し
まずはロードテストにて症状の出方・発生条件を確認したうえで、駆動系を中心に点検を進めていきます。
初期点検・ロードテスト
- 工場周辺を走行し、再現性を確認
- アクセル一定のまま加速していく際の振動・違和感をチェック
- 発進時・再加速時・減速後の再加速時など、各シーンで挙動を確認
- 異音の有無(うなり音・ゴロゴロ音・唸りなど)をチェック
試運転では、ご申告いただいたような「クラッチが滑るような細かい振動」が一瞬感じられる場面はあるものの、
大きなショックや明らかな変速不良はなく、
ミッション内部というよりはトランスファーやデフ側のオイル劣化の影響も疑われる状況でした。
そのため、一度リフトアップして下回りを点検し、トランスファーならびに前後デフオイルの状態を詳しく確認していきます。
下回り点検・オイル状態の確認
- 下回り全体のオイル漏れ、ブーツ破れ、ガタつきなどを目視点検
- プロペラシャフト・ドライブシャフトのガタ、ブーツの状態を確認
- トランスファーケース周辺のオイル滲み・漏れのチェック
- フロントデフ/リヤデフケース周辺のオイル滲み・漏れのチェック
続いて、それぞれのオイル状態を確認します。
- トランスファーオイル:
- 抜き取ったオイルは黒く変色し、粘度もかなり低下している状態
- ドレンボルト周辺には金属粉が付着しており、摩耗の進行がうかがえる
- フロントデフオイル:
- こちらも使用期間相応に汚れが見られ、金属粉の混入も確認
- 異常に大きな金属片などは無し
- リヤデフオイル(センター/左右):
- センター部はオイルの変色が進んでおり、金属粉の付着も確認
- 左右デフも同様に、オイルの劣化・汚れが進行している状態
いずれも「今すぐ大きな故障につながるレベル」ではないものの、
本来の性能を十分に発揮できない状態で使用され続けていたと考えられます。
使用オイルについて(BMW純正指定オイル)
今回の作業では、すべてBMW純正指定のオイルを使用しています。
車種・グレード・駆動方式により指定されるオイルの粘度や規格が異なるため、
部位ごとに適したオイルを選定しています。
- トランスファーオイル:BMW純正指定トランスファーオイル
- フロントデフオイル:BMW純正指定デフオイル
- リヤデフオイル(センター):専用指定のBMW純正デフオイル
- リヤデフオイル(左右):センターとは仕様の異なるBMW純正デフオイル
特にリヤデフは、センターと左右で使用されるオイルの仕様が異なるため、
誤ったオイルを使用すると作動不良や異音の原因になる場合があります。
そのため、メーカー指定どおり部位ごとにオイルを使い分けています。
作業内容の詳細
- リフトアップ・安全確保
- リフトアップ後、支持ポイントを確認し、安全確保
- 下回りの汚れを簡易清掃し、オイル漏れ箇所が分かりやすい状態にします。
- トランスファーオイル交換
- ドレンボルトを外し、オイルを完全に抜き取ります。
- 新しいBMW純正トランスファーオイルを、規定量・規定温度範囲内で充填


- フロントデフオイル交換
- ドレンより古いオイルを抜き取り、オイルの状態を確認
- 必要に応じて内部を洗浄(フラッシング的に抜き換え)
- BMW純正フロントデフオイルを規定量充填

- リヤデフオイル(センター)交換
- センター部のオイルを抜き取り、金属粉の有無を確認
- ケース周辺の清掃を行い、新しいガスケット・ワッシャーを使用して組付け
- センター用のBMW純正デフオイルを規定量充填


- リヤデフオイル(左右)交換
- 左右それぞれのドレンから古いオイルを抜き取り
- 左右で仕様の異なるBMW純正オイルを、指定どおり充填
- ドレン・フィラーボルトの締め付けトルクを規定値で管理

- 最終チェック
- オイル充填後、いったん車両を降ろして軽く駆動させ、再度リフトアップ
- 各部からのオイル漏れがないかを再確認
- 周辺ブッシュ・マウント類の亀裂や劣化も合わせて点検
ロードテスト(再チェック)
作業完了後、再度ロードテストを実施します。
- 発進時のフィーリング確認
- 低速〜中速域での一定加速時の振動・ジャダーの有無
- 巡航中・加減速時の違和感や異音のチェック
- 駐車場内での据え切りや低速旋回時の違和感確認
テスト走行中は、ご入庫時にお聞きしていた
「クラッチが滑るような振動」や「ジャダー感」は再現せず、
加速もスムーズで、駆動系からの異音も確認されませんでした。
オイル交換により、駆動系の作動がスムーズになったことが体感できるレベルで改善しています。
お車のお渡しと今後の経過観察
ロードテストで大きな不具合は確認できませんでしたが、
症状が走行シーンや路面状況、タイヤの状態、気温などの条件によって変化する可能性もあるため、
お車はお客様にお返ししたうえで、実際の使用環境でしばらくお乗りいただき、
症状の再発有無を確認していただくこととしました。
- もし再度振動やジャダー感を強く感じるようであれば、
発生した速度域・路面状況・時間帯などをお知らせいただくようご案内
- 駆動系オイルの劣化は改善されているため、
今後しばらくは安心してお乗りいただけるコンディションになったと判断しています。
まとめ
今回は、BMW X6 の加速時振動・ジャダー症状のご相談から、
トランスファーオイルおよびフロント/リヤデフオイルの交換作業を実施しました。
駆動系オイルはエンジンオイルに比べて交換サイクルが意識されにくい部分ですが、
劣化が進むと
- 振動やジャダー感
- うなり音・ゴロゴロ音などの異音
- 最終的には駆動系ユニット自体の故障
といったトラブルにつながることもあります。
「最近なんとなく振動が増えた気がする」「加速時のフィーリングが前と違う」と感じた際は、
早めの点検・メンテナンスがおすすめです。
MOTORIZE では、BMWをはじめとした輸入車の駆動系オイル交換・各種点検も承っております。
気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
MOTORIZEサービス部